公判前整理手続(ライブドア事件第1審判決を受けて)

今回のライブドア事件では、村上ファンド事件とともに大型経済事件について公判前整理手続
が利用されたリーディングケースとして注目されています。

新聞等でも若干解説がなされていますが、改めて公判前整理手続について考えてみたいと思います。

公判前整理手続(こうはんぜんせいりてつづき)とは刑事裁判で公判前に争点を絞り込む手続き。刑事訴訟法316条の2以下に定めがある。類似する手続きに、公判と公判との間で行われる期日間整理手続がある。

裁判員制度の導入をにらみ、刑事裁判の充実・迅速化を図るため、2005年(平成17年)11月の改正刑事訴訟法施行で導入された。裁判員制度では対象となる刑事裁判全てがこの手続きに付される。裁判官、検察官、弁護人が初公判前に非公開で協議し、証拠や争点を絞り込んで審理計画を立てる。

検察官は証明予定事実を明らかにし、証拠を開示。弁護人も争点を明示し、自らの証拠を示さなければならない。手続きには被告人も出席できる。採用する証拠や証人、公判日程はこの場で決まり、終了後は新たな証拠請求が制限される。初公判では検察、弁護側双方が冒頭陳述を行い、手続きの結果を裁判所が説明する。公判は連日開廷が原則。公判の途中に同様の作業をする期日間整理手続もある。

公判前整理手続の終了後は新たな証拠請求が制限されるため、被告人に不利になる場合もあると言われている。

公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、「やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き」公判前整理手続又は期日間整理手続が終わった後には、証拠調べを請求することができない(刑事訴訟法316条の32第1項)。なお、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることもできる(同条2項)。

2006年から始まった元株式会社ライブドア社長堀江貴文氏の裁判手続きにおいて採用された。
Wikipedia 2006.3.16現在の記事より)


説明にもあるように316条の2以下に「316条の○」という形で規定されています。

第316条の2の規定は

裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて、第1回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。

となっています。

裁判の長期化が問題となっていたことから、司法制度改革の内容の1つとして導入されたわけですが、
やはり問題点がないわけではありません。

よく指摘される点は、後に新たな重要争点が浮き彫りになった場合、その争点が「後出し」ということで
排除されてしまうのではないかという点。

特に、弁護側は捜査機関と異なり公判準備の段階ではじめて証拠にふれるのがほとんどであり、そのような中で弁護側に早期に争点を絞り込ませるのは、弁護側にとって不利に働くということが指摘されています。

おそらく裁判所の訴訟指揮により幅のある運用がなされるのではないかと思われるのですが、
公判前整理手続がなされたにも関わらず後に弁護側から新たな争点が提示されれば、
そもそも公判前整理手続を採用した趣旨を損なうと訴追側から指摘されることは当然でしょう。

今回は問題点の整理のみで終わりますが、ライブドア事件村上ファンド事件といった具体的事例
を参考に、今後もう少しこの手続について検討してみたいと思っています。